業務改善とは、文字通り業務を改善することです。
言い換えれば、業務の進め方を時代や社会環境の変化に合わせて改善することです。
業務削減、業務効率化、コスト削減などは業務改善に含まれる概念です。これらを行いながら業務改善を進めていくことになります。

労働人口の減少、働き方改革、AI、DXなどの昨今の企業活動におけるキーワードと切っても切り離せないテーマとして、今、業務改善が注目を集めています。

今回は、税理士という立場からだけでは無く、
外資系コンサルタント会社にて企業の業務改善のお手伝いをしていた経験から中小企業の業務改善について解説したいと思います。

業務改善と業務改革の違い

業務改善と業務改革は似たような言葉ですよね。

業務改善は企業の既存の業務プロセス全体を前提にして、
業務プロセスの一部の中の無駄を無くすことで効率化を目指します。

一方で、業務改革は既存の業務プロセス全体そのものを抜本的に見直すことです。
とは言え、明確に線引きができるものでは無いので、
業務改革に近い業務改善や、業務改善に近い業務改革もあります。

なぜ今、業務改善がブームなのか

企業に業務改善への取り組みが求められるようになったのは、昨今の社会環境の変化に理由があります。
具体的には次のような理由が挙げられます。

労働人口の減少や働き方改革

少子化の影響を受けて、若年層の人口が減少しており、今後もますます減少していくものと考えられます。
多くの企業も人手不足を感じており、これまでより少ない労働力で効率的に業務を行うことを求められてきているのです。
また、働き方改革も依然として存在感のあるキーワードとなっています。
ライフワークバランスを求める労働者もますます増えてきており、過度な残業を課すことを前提とした業務プロセスでは優秀な人材の確保が難しくなっています。
効率良く業務を行い、従業員に残業をさせないためにも業務改善が必要なのです。

テレワークの導入

昨今のコロナ禍により一時的にでもテレワークを導入した企業は多いのでは無いでしょうか。
テレワークの導入は少なからず業務プロセスの変更を伴います。
具体的には、紙や対面での業務を、PDFなどの電子媒体やZoomなどのビデオ会議での業務に置き換えるといった変更などです。
業務のプロセスを変更する時には、それが効率的なやり方なのか、他に良い方法が無いのかを検討することが必要です。
すなわち、テレワークの導入自体が業務改善を伴うものなのです。

ITブームの影響

AI、RPAなど、IT技術は近年めまぐるしく発展を続けています。
これらの技術は業務を自動化したり、効率化したりするためにも使われる技術です。
すなわち業務改善の手段となり得るものです。

簡単な作業は、近い将来にこういった技術に置き換わるとまで言われています。
企業は競争力を維持するためには、これらの技術を使って業務改善を行うことに目を向けざるをえない状況になってきています。

このように社会環境の急激な変化に伴い、今まで以上に業務を効率化し、少人数で短時間に業務を行うことが求められているのです。
そのために、企業は業務改善に取り組むことが重要な課題になっているのです。

なぜ中小企業の方が業務改善を進めやすいのか

業務改善を成功させる上で重要なのは、
業務改善を社内に浸透させ、従業員1人1人に当事者意識を持ってもらうことです。
現場で働く従業員は基本的に変化を嫌うものです。

また、業務改善は通常の業務と並行して、ある程度の作業量が発生するものです。
短期的にはむしろ負担が増える活動になりますので、
業務改善の結果、自分たちにどういったメリットがあるのかを徹底的に説明し納得を得て進めていくことが重要なのです。
この点、中小企業の場合は、大企業と比較して社員の数が少ないため、その浸透が容易であり、スムーズに業務改善を進めることが可能なのです。
さらには、意思決定に時間がかからないことも業務改善を進める上で有利に働きます。
大企業などでは、業務改善のプロジェクトチームの上に何人もの責任者が存在し、
決裁の度に時間がかかります。
業務改善がスピーディーに進まなければ、現場のモチベーションは低下しますし、自然消滅してしまうプロジェクトも多いのです。
このような理由から中小企業の方が業務改善を進めやすいと言えるのです。

中小企業の業務改善の進め方

業務改善の進め方には王道があります。
きっちりと王道に従って取り組むことで成功の確率が格段に高くなるものです。

目標の明確化

まずは、何のために業務改善を行うのか、明確な目標を決めておくことが重要です。残業を〇時間減らす、テレワークでも生産性を落とさずに業務を行えるようにする。納期を〇日短縮したいなど、なるべくわかりやすい目標を心がけると良いでしょう。
業務改善の活動はある程度の負担を伴うものです。何のためにやっているのかがわからなくなってくると、モチベーションが低下してしまうものです。
また、目標の浸透が出来ていると、各担当者が改善活動の中で判断に迷った時に、「そもそも〇〇が目標なのだから、ここはこう判断するべきだ」と、目標が判断の拠り所になり、ぶれずに目標に向かって業務改善を進めていくことができるのです。

業務の見える化

目標が定まったなら、次に業務を俯瞰して把握することが重要です。
そうすることによってはじめて、無駄な業務が無いのか、省略出来る業務が無いのか、あるいは、一部の従業員に業務が集中し、ボトルネックになっていないかなどといったことが見えてくるものです。
見える化の方法としては、業務の一覧表や、業務の流れを図で表した業務フロー図を作成する方法があります。

課題の整理、改善策の策定

業務の見える化によって見えてきた課題を整理し、
その課題に対してどういった改善策を講じるのかを決定します。

実行計画の策定、実行

整理した課題やその改善策に基づき、実行計画を策定します。
具体的には、その改善策を実行するために、誰が、何を、いつまでに、どのように行うかといったことを、タスクレベルに落とし込んでいき、実行可能性のある計画にまとめるのです。

この時に重要なのは、優先順位を決めることです。
すべての課題を解決しようとしないことです。

業務改善は通常の業務と並行して進めることが一般的です。業務改善をしているからと言って、普段の業務をストップするわけにはいきません。
業務改善に避ける人員や時間には限りがありますので、
すべての課題を完璧に解決しようとすると、途中で立ちいかなくなり、改善活動自体がストップしてしまったり、うやむやになり自然消滅してしまうことが多いのです。

具体的には、それぞれの課題やその改善策に対して、やり易さ、改善効果の大きさを考慮し、コスパの良い改善策から優先して取り組むようにしましょう。
思い切って、優先順位が高い改善策だけに絞っても良いでしょう。

中小企業の業務改善策

中小企業が取り組むべき改善策の例について、具体的に紹介したいと思います。

ITツールの導入

業務を効率化できるツールが次々に登場してきており、中には低コストかつ簡単に導入できるものも多く、そういったツールを使っているかいないかで生産性が大きく異なってしまっているのが現状です。
ITツールの活用は業務効率化に不可欠です。
課題の解決に対して有効なツールの導入を検討しましょう。

例えばデータの入力作業に時間をかけているのであれば、入力を自動化できるツールの導入を検討する必要があるでしょう。
すべての入力を自動化することが難しくても、
プロセスの中の一部の作業だけでも自動化することで生産性を上げられる可能性はあるのです。

打ち合わせに時間を要している、あるいは中々打合せのメンバーがそろわず、打合せが開催できなかったり、欠席者への個別のフォローが発生しているのなら、
打合せの内容によっては、ZoomなどのWeb会議システムなどに置き換えることで効率化を図ることが可能です。
自宅からも参加が可能なため、テレワークの推進を図ることが可能です。
外出先からでも参加が可能なため、会議室までの移動時間などを削減できます。
打合せの映像を動画として保存することも可能であるため、
参加できなかったメンバーに後で共有することも可能であり、
研修や説明会などの打合せを受講者の都合に合わせて複数回開催したり、欠席者に対して個別で説明したりといった手間を削減することができるのです。

気を付けたいのはむやみに多くのツールを導入することです。
似たような機能を持つ複数のアプリを導入してしまうと、
複数のアプリを立ち上げなければならないですし、ウィンドウを行ったり来たりしながらの作業になってしまうことになります。また、どの作業をどのアプリで行ったかがわからなくなり、探す手間が発生したりと収集がつかなくなってしまうことがあります。

ECRS(イクルス)の検討

ECRS(イクルス)とは、Eliminate(排除)、Combine(結合)、Rearrange(交換)、Simplify(簡素化)の頭文字をとったものです。
業務改善策を検討する上で重要な視点です。

例えば排除を検討すべき例ですが、

業務改善をスタートし、業務を可視化すると、前任者から引き継いだからやっているが、何のためにやっているかわからないような作業が顕在化してくるものです。
その作業をやり始めた時は意味があった作業でも、状況の変化で無意味になっているような作業は思い切って排除することを検討しましょう。
その作業にかかっていた時間が丸々削減されるため、最も改善効果が大きいのがこの排除です。

排除以外にも、担当者間で重複した作業の結合(一本化)、業務の最適な部署や担当者への交換(移管)、アウトプットに比して時間をかけすぎている業務の簡素化、などの視点を常に頭に置いておくことが極めて重要なことなのです。

まとめ

労働人口の減少、働き方改革、AI、DXなどの昨今の社会状況の変化に伴い、
今、業務改善による業務の効率化が強く求められています。
中小企業は比較的従業員が少ないため、業務改善の活動を浸透させやすく、
業務改善を進め易いと言えます。
とは言え、業務改善の進め方には王道があり、しっかりとその進め方にしたがって取り組んでいかなければ成功はあり得ません。
社会状況の変化のスピードはますますアップしていくことが想定されます。
変化に対応しながら利益を確保していけるかどうかは、業務改善への取り組みにかかっていると言っても過言ではないでしょう。

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