女性税理士

相続税申告において難関の一つが申告に必要書類の収集です。

相続税の申告のステップは大まかに次のとおりです。

①必要資料の収集
②財産評価
③分割協議
④分割協議書、申告書の作成・提出

最初の関門となっているのが必要書類の収集です。
これが整わないことには、次のステップが完了できません。

とはいえ、
どのような書類が必要で、
どのように入手すれば良いのか?
集め方や探し方がわからないという方が多いでしょう。

相続税の申告はほとんどの人が初めてです。
国税庁のHPなどにマニュアルチェックシートはありますが、
これだけでは自力での収集は難しいのが現実です。

亡くなった方は親や兄弟など身内であるとはいえ、
その方の財産・債務を漏れなく把握していますでしょうか。
どの銀行に預金があるか、どの保険に入っているか、
どうやって調べれば良いのか?

財産計上が漏れてしまっては、
加算税などのペナルティが発生してしまいます。


100件以上の相続税申告のお手伝いをしてきた経験に基づき、
特に相続人様からの質問が多い点について、Q&A形式で解説していきたいと思います。

Q1.申告書には原本を添付するのか

A.原本が必要なものは印鑑証明書のみです。それ以外はコピーを提出しましょう。
なお、印鑑証明書についても実務上、コピーを添付している税理士も多いです。

Q2.なぜ通帳、過年度の所得税申告書などの収集が必要なのか

A.残高証明書があれば通帳は必要ないのではというご質問をいただくことがありますが、
残高証明書と通帳ではその収集の目的が異なります。

残高証明書は相続開始日時点の預貯金の残高、すなわち財産計上額を明らかにする書類であって、
申告書にも添付をしていきます。

一方で、通帳は財産債務の計上漏れが無いように、過去の入手金を確認するために必要なものです。
保険の掛け金などの出金履歴から相続人が把握していなかった保険が見つかることもありますし、
財産計上すべき親族への贈与や貸付金が見つかることもあります。
あるいは相続開始後の引き落としなどから、債務計上できる未払金が見つかることもあります。

所得税申告書も同様に、計上すべき財産・債務の確認のために必要となります

Q3.戸籍は何通ずつ必要か

A.1通ずつで大丈夫です。銀行手続き、相続登記には原本の提出が必要ですが、返してもらえます。

ただし、郵送での手続きの場合などは返送されるまでに日数を要しますので、同時並行で複数の手続きを進めたい場合は、法務局にて法定相続情報を取得するか、最初から複数枚取得すると良いでしょう。
また、印鑑証明書については、金融機関によっては、発行日から3または6カ月の有効期限を設定していますので、期限を過ぎてしまった場合には再度取得が必要になります。

Q4.どの保険の証券が必要か

A.保険は特に難しいですね。
このご質問が出るということは、比較的良くお調べになっている方だと思います。

生命保険金か入院給付金か火災保険か、契約者が誰で受取人が誰かなどによって課税対象かどうかの取り扱いが異なり、
専門家でもあいまいな方も多い論点です。
まずは被相続人が契約者となっていた保険契約と、契約者ではないが保険料を負担していた保険契約を洗い出し、保険証券などの契約内容がわかる書類を収集しましょう。

Q5.保険の調べ方

A.まずは被相続人の自宅を捜索しましょう。大抵は何らかの書類が見つかるはずです。
それで見つからないものについても、
通帳の取引履歴、自宅にある社名入りの郵便物やボールペン、カレンダーなどの販促品を手掛かりにして、
保険会社に問い合わせてみましょう。


財産の計上漏れになるだけでなく、時効により保険金の請求権が消滅してしまいますので、
しっかり確認するようにしましょう。
また、賃貸不動産が加入している火災保険が不明の場合は不動産会社に問い合わせてみましょう。

Q6.預金の調べ方

A.預金についてはご自宅の引き出しや金庫に通帳やキャッシュカードを保管していることが多いです。

それ以外にも、
通帳の取引履歴、自宅にある社名入りの郵便物やボールペン、カレンダーなどの販促品、
あるいは生活圏にある金融機関などからあたりをつけて、
金融機関に問い合わせてみます。
特に、すでに見つかっている通帳の取引履歴から、
給料の振込やクレジットカード、公共料金の引き落としが確認出来ない場合には、
他にも口座を有している可能性が高いです。

しっかり確認するようにしましょう。

まとめ

相続税の申告期限は相続開始から10ヵ月です。
必要書類の収集に時間がかかってしまうと、
期限後の申告になってしまい、ペナルティが発生してしまいかねません。

故人の転籍の状況や遺産の内容によってかなり変動しますが、
この必要書類の収集だけで、100時間程度はかかると想定した方が良いと思います。

戸籍や残高証明書など、収集に時間を要するものから着手するようにしましょう。

なおこの執筆時点ではコロナ禍の状況で、
金融機関などは窓口業務の縮小をしており、訪問は予約制をとっています。
かなり先の日程でしか予約を取れない状況ですので、ますます書類の収集に時間を要してしまいます。
収集後の財産評価、申告書の作成でも時間がかかってしまうと申告期限に間に合わないリスクもありますので、
必要書類の収集の段階から専門家に相談することを検討した方が良いでしょう。

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