なぜ開業医は相続税対策を行うべきか?税理士が解説します

開業医の平均年収についての正確な資料はあまりありませんが、

厚生労働省の2019年度医療経済実態調査によりますと、個人の開業医の収入は約2,500万円で、医療法人院長の給料は約2,700万円です。

やはり、一般の会社員の方などと比較すると高額です。

また、開業医の場合は定年がありませんので、高齢になるまで収入がある方が多く、会社員と比較すると老後の資産の減少も少ないのです。

これらの理由により、必然的に資産は膨れ上がり、多額の相続税が課税されてしまうケースが多いです。

私もこれまでに多くの相続税の申告のお手伝いを行ってきましたが、多額の税額が発生した方々の中には開業医であられた方が非常に多いという印象があります。

今回は、なぜ開業医の方の相続は多額の税額が発生してしまうのか、また、生前にどのような対策が有効なのかについて解説していきたいと思います。

相続税は生前にしっかりとした対策を行うことによって減らせるものです。

ぜひご参考にしていただければと思います。

相続税はどれくらいかかるものなのか?

相続税がどれくらいかかるのか。

そもそも心配する必要があるものなのか半信半疑という方も多いと思います。以下の表は相続税の早見表です。まずはご自身やご両親の相続の際にどれくらいの相続税が発生するかご確認いただくと良いと思います。

なお、この表にあてはまらない相続の場合は別途計算が必要になります。

いかがでしょうか。

表をご覧のとおり、相続税は財産が多ければ多いほど、多額になっていきます。

相続税には「富の再分配」という思想がありますので、貧富の差を解消するために、

累進税率が採用されており、財産が多いほど税率が高くなる計算になっているのです。

最高税率は55%です。
財産を多くお持ちの開業医の方は、しっかりと将来の税額を把握し、

生前に対策を取っておくことが重要になります。

病院の財産も課税対象?

実は開業医の方の相続において多額の相続税が課税されてしまう理由がもう一つあります。
それは、病院が所有している財産にも課税がされるからなのです。

例えば、高額な医療機器や病院の不動産などを所有している場合には、これらも相続財産となってしまいます。

また、医療法人化されている方もいらっしゃると思いますが、出資持分のある医療法人の場合、その法人の出資持分も相続財産となってしまうのです。

なお、医療法人のうち、おおむね8割ほどは、出資持分のある医療法人となっております。

代表的な節税対策

開業医の相続税が多額になってしまいがち、ということはご理解いただけたのでは無いでしょうか。それでは、具体的にどのような対策を行えば良いのでしょうか。

代表的な節税対策について見ていきたいと思います。

生命保険の活用

生命保険金には非課税枠があります。

具体的には、500万円×法定相続人の数までが非課税となります。例えば、配偶者と子1人であれば、500万円×2人=1,000万円までの死亡保険金は非課税になります。

節税の効果はその相続における税率によりますが、仮に税率が40%であれば、

預金を生命保険に変えるだけで、1,000万円×40%=400万円の節税になるのです。

暦年贈与の活用

年間110万円までの贈与は贈与税が非課税になります。

贈与を受けた人ごとに110万円ですので、仮に子2人に110万円ずつ贈与すれば、年間220万円を無税で渡すことができます。

これを5年続ければ、220万円×5=1,100万円を渡すことができるのです。

仮に税率が40%であれば、1,100万円×40%=440万円の節税になります。

110万円を超えて贈与を行う場合には贈与税が発生しますが、

将来の相続税の税率よりも低い税率の範囲の贈与であれば、節税効果があります。

税理士に将来の相続税の試算をしてもらった上で、効率的な贈与について税理士と一緒にシミュレーションすると良いでしょう。

お金による贈与では無くても非課税になりますので、

開業医の場合、病院の財産を生前に後継者に移していくことで、

節税と同時に、スムーズな事業承継を図ることが可能です。

不動産投資など資産の組み換えを行う

相続税は、相続財産の相続税評価額をベースに計算されます。

現金1,000万円の相続税評価額は1,000万円です。

しかし、1,000万円で購入した不動産の相続税評価額は1,000万円ではなく、

一般的に600万円~700万円程度になります。

さらに、この不動産を賃貸に出すことでさらに減額することも可能です。

このように、相続税評価額の高い財産(現金)を低い財産(不動産など)に組み替えるという方法があります。

医療法人の出資持分の評価額の引き下げ(医療法人の場合)

医療法人は剰余金の配当が禁止されているため、内部利益が留保され、出資持分の評価額は毎期上がっていくことになります。

この対策としては例えば以下の方法により評価額を引き下げることが有効です。

・生命保険に加入する

・退職金を支給する

・役員報酬を増額する

出資持分のない医療法人へ移行する

医療法人化していない個人の開業医の場合は、新たに、持分のない医療法人を設立する方法が考えられます。

開業医個人の財産が法人へ移ることになるため、相続財産を減らすことができます。

また、持分のある医療法人を持分のない医療法人へ移行することも可能です。

事業承継の問題

開業医が生前に考えなければならない問題として、相続税対策以外にも、

事業承継の問題があります。

上記のとおり、医療機器や不動産など事業用の財産を含めて故人が所有していたすべての財産が課税の対象になります。相続人が複数いる場合には遺産分割の問題が生じることになります。

すなわち、後継者以外の人にも相続権がありますので、事業用の財産が後継者以外の人にも分割されてしまい、事業の継続が困難になってしまうことがあります。

また、医療法人の場合には、出資持分が相続財産となりますが、この出資持分は後継者以外には価値の無いものです。後継者以外の相続人が出資持分以外の財産を求めて争いになってしまうことが考えられます。

事業承継を確実に行うためには生前からの対策が重要になります。

具体的には、遺言や生前贈与などで後継者に確実に承継することを検討すべきでしょう。

まとめ:開業医は生前の相続税対策が必要

開業医は相続税が多額になるケースが多いです。

単純に収入が多いことと、事業用の財産や医療法人の出資持分が相続財産になってしまうからです。

相続税は生前の対策により大幅な節税が可能ですが、計画性や時間を要するものです。

出来るだけ早くから税理士といっしょにシミュレーションを行い、効率的な節税を実行するようにしましょう。

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