特別受益とは?時効や持ち戻しの計算方法について徹底解説!

生前に一部の相続人だけが多額の贈与を受けている場合に、残っている財産だけで各相続人の取り分を決めるのは不公平だと思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。

特別受益とは、そのような不公平を是正し、相続人間の公平性を担保するための仕組みです。
どんな贈与が特別受益に該当するのかや、特別受益の持ち戻しの計算方法、2019年の民法改正で時効などについてどのような影響があったのかなどを、かんたんにわかりやすく解説していきたいと思います。

特別受益とは

特別受益とは、一部の相続人が被相続人から生前に贈与を受けたり、遺贈を受けたりした特別な利益のことです。
なお、遺贈とは、遺言により被相続人の財産を譲り受けることです。

相続人が複数人いる場合の各人の相続分は、相続発生時の遺産にそれぞれの相続人の法定相続分、または遺言によって指定された相続分を掛けて求められます。
しかし、被相続人から特別受益を受けた特別受益者がいる場合に、通常の法定相続分にしたがって相続分を決定してしまえば、特別受益者とそれ以外の相続人との間に不公平が生じてしまうことになります。

そこで、民法では特別受益者がすでに得た利益、つまり特別受益を算定し、これを遺産に含めて相続分を決定するように定めているのです。

特別受益になる贈与とは

特別受益の対象になる贈与は、次のとおり民法第903条に「婚姻、養子縁組のためもしくは生計の資本」として受けた贈与であると規定されています。生前贈与については、そのすべてが特別受益に該当するわけではないのです。
一方で遺贈は、目的を問わず、すべてが特別受益とみなされます。

(特別受益者の相続分)
第九百三条 共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。
2 遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。
3 被相続人が前二項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思に従う。
4 婚姻期間が二十年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人は、その遺贈又は贈与について第一項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定する。

民法第903条

それではどのような贈与が特別受益になるのかを具体的に見ていきましょう。

遺言書による遺贈

被相続人から遺贈により財産を受け取った場合は、目的を問わず、すべてが特別受益とみなされます。
遺言書の書き方については、「遺言書の書き方を徹底解説|例文を使ってかんたんに作成可能」をご参照ください。

婚姻のための贈与

婚姻のための贈与とは、具体的には支度金、結納金、挙式費用や、タンス、衣類といったいわゆる嫁入道具が該当します。
ただし、金額が少額である場合は扶養義務の範囲とみなされ特別受益には該当しないでしょう。
また、結納金や挙式費用などは地域の慣習によっては、親が支出することが当たり前であり、特別な事ではないと考えられる場合もあります。
このような場合は特別受益とはみなされない可能性もあるでしょう。

このように、その贈与が特別受益に該当するかどうかは、時代や地域などによっても変化するものであり、微妙な判断を要する場合もあるということは念頭に置く必要があります。

養子縁組のための贈与

養子縁組とは、血縁関係のない人同士が法律上の親子関係を結ぶための制度のことを言い、生みの親のことを実親、育ての親のことを養親と言います。
そして、養子縁組にも「普通養子縁組」と「特別養子縁組」があり、養子は、普通養子縁組の場合は実親、養親の両方の相続人になることができ、特別養子縁組の場合は、養親のみの相続人になります。

養子縁組のための贈与とは、養子縁組に際して、実親から養子に渡される持参金などが該当します。
実親の相続発生時に、相続人である養子の特別受益の対象になるということです。

あるいは、養子縁組に際して、養親の方から居住用の不動産を与えられるといったこともあるでしょう。
この場合は、養親の相続発生時に、相続人である養子の特別受益の対象になるということです。

生計の資本としての贈与

生計の資本としての贈与とは、具体的には、居住用不動産、自動車、事業のための開業資金などが該当します。
その他には、一部の相続人だけが受けた高額な学費なども該当します。
また、生活費の援助であっても、扶養義務の範囲を超えるような多額の援助である場合は、特別受益に該当する可能性が高いでしょう。

多額な生命保険金は特別受益に該当する可能性がある

生命保険金は、保険金受取人の固有の権利であり、贈与には該当しません。
上記の通り、特別受益に該当するのは一定の贈与と遺贈です。
したがって、通常、生命保険金は特別受益には該当しません。

ただし、相続人の一人が受け取る生命保険金があまりに高額であった場合はどうでしょうか。
例えば、生命保険金が1億円で、残っている遺産が1,000万円である場合を考えてみます。
生命保険金が特別受益に該当しないとすれば、生命保険金を受け取らない相続人は、残っている1,000万円からしか遺産を受け取れないことになります。
これでは相続人間の公平性が保てるでしょうか?
このように、相続人の中で特定の人だけが、遺産総額に比して高額な生命保険金を受け取る場合には、諸般の事情を総合的に勘案して特別受益に該当するかどうかを判断することになります。

特別受益の計算方法

特別受益の計算方法

特別受益者がいる場合の相続分

【特別受益者がいる場合の相続分の算定】

みなし相続財産=被相続人が相続開始時に残した財産の価額+特別受益者が得た贈与・遺贈分(特別受益額)

特別受益者の相続分=みなし相続財産×法定相続分-特別受益額

特別受益者以外の相続分= みなし相続財産×法定相続分

相続人の中に特別受益者がいる場合の相続分は上記のように計算します。

まず、特別受益者が得た贈与や遺贈の金額、つまり特別受益額を相続財産に加算して、「みなし相続財産」を算出しますが、このように特別受益額を相続財産に加算することを「特別受益の持ち戻し」と言います。

そして特別受益者の相続分は、みなし相続財産に法定相続分を乗じた金額から特別受益額を引くことで計算され、特別受益者以外の相続分はみなし相続財産に法定相続分を乗じて計算されるのです。

なお、法定相続分とは民法で定められた各相続人の取り分の目安のことで、例えば相続人が配偶者と子供の場合は、配偶者の法定相続分が2分の1,子供の法定相続分は残りの2分の1を子供の人数で均等にわけた割合になります。

特別受益者がいる場合の相続分の計算例

特別受益者がいる場合の相続分の計算について、計算例を見ていきましょう。

【計算例】

前提条件
・遺産総額:3,000万円
・相続人:配偶者、長男、長女
・特別受益:長男1,000万円

みなし相続財産=3,000万円+1,000万円=4,000万円

長男の相続分=4,000万円×1/4-1,000万円=0円

配偶者の相続分= 4,000万円×1/2=2,000万円

長女の相続分=4,000万円×1/4=1,000万円

相続分の計算結果を、特別受益を考慮しない場合と考慮する場合で比較してみます。

相続人法定相続分特別受益を考慮しない
場合の相続分(参考)
特別受益を考慮する
場合の相続分  
  
配偶者1/21,500万円2,000万円
長男1/4750万円0円
長女1/4750万円1,000万円

特別受益を考慮することで、長男は自分が受けた特別受益の分だけ、相続での取り分が少なくなり、配偶者、長女は逆に取り分が増える形になることが確認いただけると思います。
なお、相続分の計算の結果、特別受益者の相続分がマイナスになる場合は、特別受益者の相続分は無しということになります。

特別受益の価額

特別受益の持ち戻しは、贈与を受けた財産を、相続開始時の時価に換算して行います。
例えば、贈与した時に、1,000万円だった土地が相続開始時に5,000万円となっていれば、特別受益額は5,000万円となります。
なお、特別受益者が贈与を受けた財産をすでに処分していたとしても、その財産があるものとして相続開始時の時価を算出し、持ち戻しを行います。

特別受益に時効はあるのか?

特別受益に時効はあるのか?

特別受益に時効はありません。
つまり、贈与の時期に関係なく、何年前の贈与であっても、特別受益に該当する可能性があるということです。
とはいえ40年、50年前の贈与は証拠が残っていないことも多いでしょうし、記憶だけに基づいて特別受益の持ち戻しを行ってしまえば、相続人間に禍根を残す結果になりかねません。
現実的には、相続人同士で話し合って、どこまでを対象にするか折り合いをつけるケースが多いでしょう。

2019年の民法改正の影響

2019年の民法改正により、遺留分を計算する際の特別受益の持ち戻し期間が10年と定められました。
また、結婚20年以上の配偶者への自宅の贈与は、特別受益の持ち戻しが免除されることになりました。
それぞれ詳しく解説していきます。

遺留分計算における特別受益の持ち戻し期間が10年に

特別受益自体に時効はありませんが、遺留分侵害請求において遺留分を算定する際には、相続開始前10年間までの特別受益のみを持ち戻すことになりました。
あくまで遺留分を算定する際だけの期間制限であり、遺産分割協議において考慮する特別受益には期間制限は無いということに注意してください。

特別受益が問題になる場面は2つあり、
一つ目は遺産分割協議です。
被相続人が遺言を残さなかった場合に、相続人全員で話し合って遺産の分け方を決めますが、これを遺産分割協議と言いますね。
遺産分割協議を行う際に、特別受益を考慮した各相続人の相続分が、分け方の目安になるというわけです。

そして、もう一つ特別受益が問題になるのが遺留分侵害請求です。
遺留分とは、民法上相続人に認められている最低限の取り分です。
遺言や生前の贈与によって、この遺留分に満たない遺産しか受け取ることができなかった相続人は遺言や贈与で財産を取得した人に対して金銭の支払いを請求することができ、これを「遺留分侵害額請求」と言います。
2019年の民法改正によって、この遺留分を算定する際の持ち戻し期間が10年に定められたのです。

結婚20年以上の配偶者への自宅の贈与は特別受益の持ち戻しが免除

2019年の民法改正によって、結婚20年以上の配偶者への自宅の贈与は特別受益の持ち戻しが免除されることになりました。
正確には、特別受益の持ち戻し免除の意思表示があったものと推定されるようになったのです。

持ち戻し免除の意思表示とは、被相続人が「贈与した財産を相続財産に含めないでほしい」と意思表示することで、通常遺言書などにその旨を記載して意思表示を行います。
持ち戻し免除の意思表示がある場合は、持ち戻しを行わずに各相続人の相続分を計算することになります。

結婚20年以上の配偶者への自宅の贈与については、遺言書などの書面に残っていなくても意思表示があったものとして、持ち戻しが免除されることになったのです。

特別受益の持ち戻しの対象者

特別受益の持ち戻しの対象になるのは、相続人に限られます。
これは、特別受益の持ち戻しが、相続人間の公平を担保するために設けられた仕組みだからです。
したがって、相続人以外の人が生前に贈与を受けていたとしても、原則として特別受益とはなりません。

特別受益者が相続放棄を行った場合は持ち戻しの対象にならない

特別受益者が相続放棄を行った場合は、持ち戻しは行わないことになります。
なぜなら、相続放棄を行った者は民法上はじめから相続人ではなかったものとして扱われるからです。
特別受益の持ち戻しは、相続人間の公平を担保するための仕組みですので、相続人ではなかったものとして扱われる人が受けた贈与は特別受益の持ち戻しの対象にはならないのです。

相続税の申告では特別受益の持ち戻しは行わない

相続税の申告では特別受益の持ち戻しは行わない

特別受益は遺産分割協議や遺留分の計算をする際に相続財産に持ち戻しますが、相続税の申告では特別受益の持ち戻しは行いません。
生前贈与を受けたときにすでに贈与税の対象になっているので、あらためて相続財産に加算して相続税を課税するということはしないのです。

ただし、相続税には、死亡前3年以内に行われた贈与を相続財産に加算する「生前贈与加算」というルールがあります。
特別受益とは対象になる贈与や価額の計算方法が異なりますので注意が必要です。

まとめ

特別受益に該当するかどうかの判断や、持ち戻しを行う場合の相続分の計算は簡単ではなく、不用意に判断や計算を行ってしまっては、相続人間の認識の違いが発生し、トラブルに発展してしまう可能性があります。
必ず税理士などの専門家に相談しながら進めるようにしましょう。
生前に遺言書を作成しておくことでトラブルのリスクを軽減することも可能です。

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