タンスにお金を保管する、いわゆるタンス預金は何が悪いのでしょうか?
なぜ税務調査という話になるのでしょうか?
まず、タンスにお金を隠すこと自体は決して悪いことではありません。
銀行に預けるよりも手もとに保管した方が安心だし、タンスなら泥棒にも簡単には見つからないと考えることはおかしいことではありません。
タンスではあぶないと考え、本棚に隠している人もいるでしょう。過去のお客様には庭の土の中に埋めていた方もいらっしゃいました。

タンス預金をすること自体が悪いことではなく、現金にかかる相続税を回避するためにタンスにお金を隠し、そのまま相続税を申告しないことが問題なのです。
あるいは、相続人がタンス預金の存在に気が付かずに申告を漏らしてしまうこともあります。

中には銀行から移してしまえば、銀行預金ではないので相続財産ではなくなると考える方もいらっしゃいますが、タンス預金も亡くなった方が遺した財産に変わりはありません。当然、相続税の申告が必要な財産です。
また、銀行から移してしまえば、税務署が気が付かないとお考えの方もいらっしゃいますが、タンス預金はばれると思っていただいて間違いありません。

タンス預金がなぜ税務調査でばれるのか、いくらまでなら大丈夫なのか、ばれない隠し方があるのかについて、相続専門の税理士である私から解説したいと思います。

タンス預金がなぜ税務署にばれるのか

税務署は亡くなった方や相続人の預金残高や入出金の状況を把握しているということをご存じの方は多いかもしれません。これは事実です。
したがって、相続した銀行預金を申告しないという方はなかなかいらっしゃらないと思います。
一方で、自宅のタンスにいくら入っているかなんて税務署にわかるわけがないと思われるかもしれません。
しかし、税務署が本気を出せば、あの手この手でタンス預金の存在がわかってしまうのです。

多額の出金でばれる

銀行は預金者の入出金の履歴を、通常最低10年分は保管しています。
したがって、税務署は最低でも亡くなる10年前まで遡って入出金を調べることが可能です。
この間に多額の出金があり、かつその使い道が不明なものがあれば、タンス預金を疑われてしまうのです。

タンス預金の入金でばれる

タンス預金などの亡くなった方の手もとに残っていた現金を相続した相続人は、そのお金を自分の銀行口座に入金する場合が多いでしょう。
税務署が相続人の預金残高や入出金の状況も把握しているということは上述した通りです。相続が発生した後に相続人の預金口座に銀行口座からの振込みによる入金ではなく、大量の現金の預入があったら税務署はどう思うでしょうか。当然疑われることになり、その権限を活かして入念な調査を行うでしょう。
なお、新紙幣への切替も予定されていますが、今後、旧紙幣で相続したタンス預金を持て余してしまい、銀行に預入れたタイミングでタンス預金の存在を把握されるということも起こりえるでしょう。

国税総合管理(KSK)システムでばれる

税務署はKSK(ケイエスケイ)と呼ばれるシステムを使って、国民の収入や財産を把握しており、亡くなった方がどれくらいの財産を遺しているはずであるかということは、おおよそばれているのです。
したがって、その税務署が想定していた財産より少ない申告がなされれば疑われてしまうのです。
KSKは全国の国税局と税務署をネットワークで結んでおり、納税者の過去の申告や納税の状況やその他の状況を一元的に管理しています。税務署はこのシステムを使って納税者の情報を検索、分析し税務調査の対象を割り出しているのです。

国税庁HPより

タンス預金は少額であれば税務署にばれないのか?

税務署にもマンパワーや、調査能力の限界があるのも事実でしょう。数万円の不明入出金を疑い出せばきりがありませんし、それに対して追加で徴収できる相続税もわずかなものです。
一般的に、タンス預金の疑いがかかるのは100万円以上と言われています。
したがって、100万円を超えない金額であれば、ばれない可能性はあります。
ただし、もちろんばれなければ良いという問題ではないということは言うまでもありません。
もしばれてしまえば、本来の相続税分に加えて、無申告加算税、過少申告加算税、重加算税、延滞税といったペナルティが発生する可能性があります。
隠す事は誰にとっても決して気持ちの良いものではないでしょうし、少なからず税務調査の不安を感じながら日々を過ごしていくことになるでしょう。
少額であっても、きっちりと申告するようにしましょう。

タンス預金のばれない隠し方

お金を銀行に預けるのが不安だから自宅に保管したいという方もいらっしゃるでしょう。
泥棒からばれない隠し場所という意味では、タンスだけでなく、本棚、冷蔵庫、屋根裏、庭の土の中などいろいろとばれない隠し方が考えられると思います。
しかし、税務署にばれない隠し場所という意味では、どこに隠しても同じと思ってください。
というのも、上述のとおり、税務署は亡くなった方の銀行の入出金の記録、相続人の入金の記録や国税総合管理システムでの分析をもとに申告漏れを抽出します。つまり、いきなり家宅捜索をして探し出すわけではありませんので、ばれるかどうかは隠し場所の問題ではありません。
もちろん、税務調査が自宅に来ても隠し通すつもりということでしたら話は変わりますが。。。
ちなみに、税務調査の対象になってしまっている時点で税務署は確信に近い疑いを持っていますので、嘘で乗り切るというのは現実的ではありません。
税務調査が決まってからの入出金の動きも監視されますし、調査官はさりげない雑談の中でも、ボロを出させようと誘導してきます。
彼らもプロですので納税者の想像もつかない角度から徹底的に調査を行いますので、隠せるとは思わないようにしましょう。

まとめ

銀行の倒産リスクや、緊急時の備えとして自宅に現金を保管すること自体が悪いということではありません。申告をしないことが問題なのです。
故意に財産から除いてしまえば、税務署にばれるものですし、ペナルティが加算される可能性もありますので絶対にやめましょう。
タンス預金には、災害による滅失のリスクや、盗難のリスク、あるいは、タンス預金の存在を忘れてしまっていて、申告を漏らしてしまうリスクがあります。
また、銀行預金をタンスに移しても申告が必要な財産であることには変わりはありませんので、相続税を減らす節税効果はありません。
節税がしたいのであれば、タンス預金ではなく、生前贈与や、生命保険への加入といった余剰資金を使った節税対策もあります。

節税対策や税務調査対策は相続専門の税理士に依頼するようにしましょう。

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